LOGIN「本日は、旦那様ですか? 彼氏様ですか?」
「彼氏です」
久しぶりの彼氏案件。
受付番号:026
西村莉子、28歳。
交際1年4か月。「今日、何をされました?」
「“今から会える?”って」
「会えない?」
「会えます」
「では?」
「毎回なんです」
彼氏から来る連絡。
金曜21時。
『今から会える?』
日曜夕方。
<「本日は、旦那様ですか? 彼氏様ですか?」「彼氏です」久しぶりの彼氏案件。受付番号:026西村莉子、28歳。交際1年4か月。「今日、何をされました?」「“今から会える?”って」「会えない?」「会えます」「では?」「毎回なんです」彼氏から来る連絡。金曜21時。『今から会える?』日曜夕方。『今日暇?』予定していた友達との飲み会がなくなった時。『暇になった。会う?』「事前にデートを決めることは?」「私から言えば」「彼からは?」「ほぼない」私は書く。本日の罪状:彼女を予定ではなく空き枠として運用莉子さんが少し笑う。「それです」彼氏は優しい。会えば楽しい。でも。自分が最初の予定ではない。何かがなくなった時に、
ベルが鳴る。女性が2人。「あの、付き添いでもいいですか?」一人は見覚えがある。麻衣さん。Case 09。「住民登録は?」麻衣さんが笑う。「継続中です」隣の友人を指す。「今日はこの子」受付番号:025吉村亜弓、35歳。夫37歳。「今日、何をされました?」「夫が“皿洗いやっといたよ”って」食洗機には皿。でも。フライパン。鍋。包丁。まな板。炊飯器の内釜。全部シンク。「ご主人は?」「食洗機に入らないものは“皿洗い”に含まれないらしいです」私は書いた。本日の罪状:機械に入れた工程のみ家事として計上さらに。食洗機終了。中身はそのまま。翌朝。妻が片づける。
「いらっしゃいませ」受付番号:024高瀬由里、46歳。夫48歳。「今日、何をされました?」「“聞いてない”って言われました」娘の三者面談。妻。「来週木曜ね」夫。「うん」冷蔵庫のカレンダーにも記入。家族LINEにも送信。前日。妻。「明日だからね」夫。「了解」当日。「今日、会食入れちゃった」妻。「三者面談は?」夫。「聞いてない」私は赤ペンを置いた。「3回?」「3回」書く。本日の罪状:記憶から消えた情報を未通知扱い「他にも?」「粗大ゴミの日」「聞いてない」「義父の法事」「聞いてない」「エアコ
「友達の恵さんに聞きました」大野恵さん。Case 11。「美容院、行けたそうです」「それは何よりです」受付番号:023岡田沙也加、38歳。夫40歳。「今日、何をされました?」「何時に帰る?って聞かれました」妻が飲み会。夫。『何時に帰る?』美容院。『何時頃?』友達とランチ。『夕飯までには帰る?』「ご主人が外出する時は?」沙也加さんがスマホを見せる。夫。飲んでくる以上。「帰宅予定は?」「なし」「聞くと?」『まだ分かんない』「連絡は?」『今から帰る』時刻。23時48分。私は書いた。妻の外出:帰宅時刻申告制夫の外出:自由航行「心配してるだけだと思うんです」&n
「いらっしゃいませ」「本日は?」「夫です」受付番号:022橋本千秋、34歳。夫36歳。「今日、何をされました?」「ゴミを捨てました」「問題なさそうですが」「ゴミ箱が満杯だったんです」夫。ゴミを持つ。蓋を開ける。いっぱい。そこで袋を替える――のではなく。上から押す。ギュッ。「入った」私は書いた。本日の罪状:満杯を“まだ入る”と判定「翌朝は?」「また押す」「その次は?」「また押す」「最終的には?」「私が袋を引き抜こうとして、破れます」我慢度。★★☆☆☆ → ★★★☆☆「夫は何と?」「“袋弱くない?”」赤ペン。追加罪状:圧縮による破損を袋の強度
午前10時。私は昨日買ったばかりのノートを開いた。表紙には赤いペンで、予約と書いてある。記念すべき最初の名前。10:00 松本亜紀様ベルが鳴った。「いらっしゃいませ」少し不安そうな女性が入ってくる。「予約した松本です」「お待ちしておりました」言ってみる。少しだけ店らしくなった。「本日は、旦那様ですか? 彼氏様ですか?」「夫です」受付番号:021松本亜紀、40歳。夫42歳。結婚13年。「ではまず――今日、何をされました?」「醤油です」「醤油?」「昨日、肉じゃが作ったんです」「はい」夫が席につく。妻が肉じゃがを出す。夫は箸を持つ。そして一口も食べずに、醤油。ドボドボ。私は赤いペンを止めた。「味見は?」「してません」書く。本日の罪状:料理人への確認なく味を修正「肉じゃがだけ?」「カレーにはソース」「はい」「目玉焼きには醤油」「好みですね」「私が作ったパスタには、食べる前から粉チーズ」「なるほど」「昨日は言いました。“一口食べてからにして”って」「ご主人は?」「“俺、濃い味好きだから”」私は追記した。本人の味覚を絶対値として運用亜紀さんが笑う。「別に醤油かけてもいいんですよ」「はい」「でも食べてからにしてほしい」「はい」「3時間煮た肉じゃがを、一口も食べずに“修正”されると」少し黙る。「私の味、最初から信用されてないみたいで」私は黒いメニューを取り出した。「では本日は」「はい」「ご主人の味覚に、少し自信をなくしていただきましょう」Aコース『最初の3口・調味料使用禁止』「現実的」「まず料理そのものを味わっていただきます」Bコース『全料理・勝手に味変』ご主人が食べるものすべてに、他人が勝手に調味料を追加。寿司にケチャップ。ラーメンにジャム。プリンに醤油。「最後ひどい」「Bですので」そしてC。Cコース『完全書き殺し・調味料の逆襲』夫が調味料をかけるたび、その調味料が100倍になって返ってくる。「醤油なら?」「100倍」「ソース?」「100倍」「塩?」「非常に危険です」亜紀さんは少し迷う。「でも昨日、夫こう言いました」「何と?」「“味薄かったから足しただけ”」赤ペン。追加罪状:味見前に味の判定「Cですね」







